横長の会議棟がすっと直線上に延びる。左端が非常階段部=尾籠章裕撮影

 相模灘の大海原が広がり、潮風を肌で感じる。伊東市観光会館(静岡県)の前にたたずむと、その個性的な外観に目を奪われる。

 地下1階、地上3階建ての鉄筋コンクリート造りで、1966(昭和41)年に完成した。会議棟とホール棟で構成されている。「観光」と名が付くものの、観光案内をする施設ではない。コンサートや講演会、会合などが行われ、地元の人たちに親しまれている。

建物外観。右がホール棟、左が会議棟=尾籠章裕撮影

 ホール棟の正面は、天井まで採光窓が設けられ開放感にあふれる。曇り空でも明るいイメージを内部に醸し出す。吹き抜けのホワイエではタイル画が来館者を出迎え、途中で折り返す柱のない階段は、空間に広がりを与える。白色の外観は大きな箱舟のようだ。

 会議棟は横長。大きな6本の柱が目に付き、非常階段が連結している。窓枠は一直線に配列され、建物の構成美のアクセントになっている。窓を開けると、釣り人や遠く初島(静岡県熱海市)の姿があった。のどかな光景に、カモメの鳴き声が響き渡った。

ホール棟のロビーに入るとアート作品を思わせる柱が出迎える=尾籠章裕撮影

025年3月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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