
ドラマや映画でもおなじみ、みなとみらい21地区に「横浜港ハンマーヘッドクレーン」(横浜市中区)はある。英国で製造された港湾荷役専用のクレーンで、1914(大正3)年に整備された。
高さ約31㍍、アーム長は約43㍍。人力の荷役が中心だった時代に、最大50㌧の荷をつり上げられた。重量物を効率的に運ぶことが可能となり、荷役の近代化に寄与した。本来の名称は「固定式電動起重機」だが、かなづちのような形から「ハンマーヘッド」の愛称で呼ばれる。
完成の9年後に起きた関東大震災では港湾の岸壁などが崩落したが、ハンマーヘッドクレーンの基礎部分は「ニューマチックケーソン工法」で強固に施されていたため、ほとんど被害がなかった。
2001年まで稼働し、18年には土木学会選奨土木遺産になった。現在、周辺は商業施設や公園が整備され、買い物客や観光客が行き交う。華やいだ景色の中にそびえ立つ武骨な塔が、港の歴史を伝えている。


2025年3月2日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載