直線のフォルムが目を引く外観。奥が小ホール、手前が庭に面した大ホール=尾籠章裕撮影

 東京・駒沢公園の西側にある駒沢大学深沢キャンパス(東京都世田谷区)。そこに「洋館」と呼ばれている建物がある。昭和を代表する建築家の一人、吉田五十八が手掛けた「旧三越シルバーハウス」だ。百貨店大手、三越の迎賓館の施設として1972(昭和47)年に建てられ、99年に同大の管理になった。

 吉田は伝統的な数寄屋造りをモダニズムと融合させた。外観は和のイメージを持ちながらも、シンプルで直線的な構成美をもたらしている。鉄筋コンクリート造りで、大きく突き出た軒が印象的。色彩としては、銀色や白色を基調としている。

 中に入ると大小二つのホールやロビーがあり、豪華なシャンデリアや調度品もそのまま残る。ホールはいずれも床から天井まで窓があり、開放感にあふれている。

陽光が差し込む小ホール=尾籠章裕撮影

 庭園は四季を通して表情を変える。桜や紅葉に彩られ、ゆるやかな起伏の小山が借景となっている。テラスにたたずみ庭を眺めると、移ろいの激しい今とは一線を画した穏やかな時間が流れた。

池の水面に小ホールのフォルムが浮かび上がる=尾籠章裕撮影

2025年1月12日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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