白いレースのように水が流れ落ちる白水溜池堰堤水利施設。6月には越流は再開される予定=金澤稔撮影

 大分県竹田市周辺には「井路(いろ)」と呼ばれる農業水利施設がいくつも残っており、「竹田のかんがい用水群」として観光資源になっている。同市はくじゅう連山と祖母山系に挟まれ、谷底や棚田など狭い範囲での農業を強いられてきた。この地を領地とした岡藩主・中川久清が1661(寛文元)年ごろに整備した「城原(きばる)井路」は7・7㌔に及ぶ。昭和初期までに各地に張り巡らされ、総延長は130㌔を超える。

 農業用水を取水する「白水溜池堰堤(えんてい)水利施設」(白水ダム)は曲線美が際立つ。さらさらと水が流れ落ちる様はレースのカーテンのよう。川床が水力で削られないようにする工夫で、1938(昭和13)年の完成時からそのままという。

 17(大正6)年に建造の「若宮井路笹無田石拱橋(せっこうきょう)」は2連アーチ式で、国の有形文化財。JR豊肥線の赤色の列車が一部で並走する。「明正井路第一拱石橋」は19(大正8)年完成。6連石造りのアーチ橋で、連数、長さともに日本一を誇る。いずれも溶結凝灰岩が組み合わされ、石工の技術力の高さをうかがわせる。

1917年に建造された若宮井路笹無田石拱橋。JR豊肥線との並走区間は観光客に人気があるという=金澤稔撮影
石垣を積み上げて作った明治岡本井路。“石垣井路”の異名を持つ=金澤稔撮影

2025年1月5日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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