大正期の面影を感じられる洋館が、都心の一等地にある。旧島津家本邸本館(東京都品川区)は、鹿鳴館などの設計で知られる英国人建築家、ジョサイア・コンドルが手がけた。レンガ造りの建坪約280坪で、1917(大正6)年に落成披露された。地上2階、地下1階建てで、現在は清泉女子大学本館として、授業などで活用されながら保存もされている。
建物南側には芝生に覆われた庭が広がる。円弧状に張りだしたベランダは開放的で、石造りの列柱廊を持つ。1、2階で異なったデザインの手すりまわりや柱頭を用い、様式美に変化をもたらしている。1階中央ホールの大階段は、2段に分かれて折り返す左右対称の形式。親柱や「手すり子」に細かい彫刻が施されている。
館内随所にあるステンドグラスが室内に鮮やかな光をもたらす。暖炉やしっくい天井にも上質な装飾が施され、豪華かつ格式を感じさせる。
2019年に国の重要文化財に指定された。通常は非公開だが、春と秋に見学ツアーを開催している。
2024年11月10日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載