ガラス窓を貫くような壁と天井が内と外の一体感をもたらす=金澤稔撮影

 木々の生い茂る熊本城公園の一角に、熊本県立美術館(熊本市)はたたずんでいる。

 1977(昭和52)年の完成。公園内の階段を上りながら直角に何度か曲がると、正面玄関にたどり着く。設計した前川國男は「攻めにくい」城を強く意識し、美術館の玄関まで一直線に到達できないように工夫した。

 外観は土を素材にした「打ち込みタイル」で覆われ、ひっそりとした印象を与える。中に入ると、ワッフルスラブ(格子はり)の高い天井に圧倒される。その格子の中は「成層圏ブルー」と呼ばれる青色に塗られている。

ワッフルスラブの中は青色「成層圏ブルー」に塗られている=金澤稔撮影

 地階からの吹き抜けホールは館内の各展示室につながる起点だ。大屋根の天井を支えるコンクリートの柱は表面が杉板模様になっていて、威圧感を和らげる。

吹き抜けの天井を支える柱=金澤稔撮影

 ガラス窓は大きく、木立をすかした外光が優しく差し込む。壁と天井が窓を貫くような造りで、内と外がつながっているような開放的な空間を演出。館内では、熊本ゆかりの古美術や現代美術作品が多数収蔵・展示され、来館者を楽しませている。

2024年10月20日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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