曲線と直線の構成美が調和する建物外観=尾籠章裕撮影

 王子駅から下町風情のある住宅街を歩くと、昭和初期の風情を残す建物に出合った。1936(昭和11)年完成の東書文庫(東京都北区)だ。正式には「東京書籍株式会社附設教科書図書館 東書文庫」という。日本初の教科書図書館だ。鎌倉時代から現在までの教科書や版木などが多数所蔵されている。

 鉄筋コンクリート造りの2階建てで、書庫は3層の構造になっている。79年に西側の一部が増築された。全体的に、直線美と曲線美がゆるやかに融合したデザインで、幾何学性が強調されたアールデコ様式が見られる。建物の入り口は、端に丸みを持たせたひさしを2本の円柱が支えている。建物北側の半円に張りだした部屋もアクセントになっている。

玄関ホール上部のアーチ部分=尾籠章裕撮影

 中に入ってすぐの玄関ホール。上部には、ゆるやかな弧を描くアーチがあり、ドア部分の直線美との融合がここでも見られる。

 建物は99年に北区の有形文化財に、2009年には所蔵資料の約半分が国の重要文化財に指定された。閲覧・見学には事前予約が必要。

直線美がシャープな印象をもたらす階段まわり=尾籠章裕撮影

2024年10月13日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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