庭園から眺める3階建ての旧三井家下鴨別邸の主屋。サルスベリの花が彩りを添えていた=山崎一輝撮影

 豪商・三井家の旧三井家下鴨別邸(京都市左京区)は、賀茂川と高野川の合流地域にたたずむ。1925(大正14)年、10代当主の三井八郎右衛門高棟(たかみね)が建立。三井家が先祖を祭る顕名(あきな)霊社への参拝の際、休憩所として使おうとの趣旨だった。

 敷地は5720平方㍍で、主屋(3階建て)、玄関棟(平屋)と茶室(同)という木造建築が並ぶ。主屋は1880(明治13)年建築の木屋町別邸を移築したもので、苔(こけ)地の庭にはひょうたん形の池がある。3階部分は望楼になっていて、大文字山など四方を見渡せる。玄関棟は書院造りだが、天井が高くじゅうたん敷きで、洋式の居室として使用。椅子座でありながら、ガラス窓には日本庭園が見渡せるなど、和洋折衷の趣が感じられる。

書院造りを基調としながら高い天井の玄関棟=山崎一輝撮影

 戦後は国に譲渡され、京都家庭裁判所長の宿舎として2007年まで使われた。また、近代和風建築としての価値が高く、11年に重要文化財に指定、16年からは一般公開されている。今は観光客らを迎え、京都の歴史を広く伝えている。

茶室の円窓から見える庭園の池=山崎一輝撮影

2024年10月6日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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