桜の名所として知られる名古屋市昭和区の鶴舞(つるま)公園。その西側、正面出入り口からヒマラヤスギの並木道を歩くと、涼しげな噴水塔が見えてくる。名古屋開府300年にあたる1910(明治43)年に開催された地方博覧会「第10回関西府県連合共進会」の際、メイン施設の一つとして建設された。
噴水塔は大小五つの人工池の中央に立つ。大理石の円柱が映えるローマ様式と、基部に岩組みを配した和洋折衷が特徴。「名古屋をつくった建築家」と称される鈴木禎次(ていじ)が設計した。水を噴き上げるのではなく、約10㍍の高さにある青銅製の水盤から突き出した八つの水路より水を流し落としている。水は直下の「承露盤(しょうろばん)」と呼ばれる軒先に勢いよくぶつかり、水玉は霧へと変わる。ミストシャワーのようになり、周囲に涼を与えている。
地下鉄(鶴舞(つるまい)線)の建設工事のため、73(昭和48)年に一時撤去されたが、4年後に当時の姿に復元され、現在も同公園のシンボルとして市民に親しまれている。
2024年09月22日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載