2階の回廊から見渡した営業フロア

 下関市役所(山口県)からJR下関駅に抜ける旧山陽道沿いは、明治から昭和初頭にかけて西日本屈指の金融街だった。

 山口銀行旧本店は1920(大正9)年、三井銀行下関支店として建てられ、44(昭和19)年に山口銀行本店となった。設計は、多くの銀行建築を手掛けた長野宇平治が担当した。

 正面の付け柱は古典主義的デザイン。牛頭の彫刻が施され、重厚さを醸し出している。内部は吹き抜けの広々とした空間になっていて、縦長形の窓から入る光が内壁のしっくいに反射しその明るさに目を見張る。接客用のカウンターは角が取られて丸みがあり、窓口の柵も木製だ。

 ロビーに広がる亀甲形のタイルはモダンな雰囲気で、営業フロアや2階のリノリウム張りの床は鈍く光る。2階に延びる木製のらせん階段は美しく、職人の手曲げによる仕様という。

白を基調にした館内にオレンジ色の亀甲形タイルが映える
営業当時の姿が今も残る

 壁と基礎部分はレンガ造りで、花こう岩とモルタルで装飾されている。柱と梁(はり)はアメリカで開発された「カーン式鉄筋コンクリート」造り。明治後期から大正期にかけて各地で多く見られる様式だ。

2024年09月15日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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