地下にある配水池の入り口になるドーム型の建物=須賀川理撮影

 旧野毛山配水池(横浜市西区)は横浜港から2㌔ほどの小高い丘の上にある。草木が茂る敷地は柵で囲まれ、黒っぽい壁に白いドーム屋根の小さな建物が見える。地下に設けられた二つの配水池への入り口だ。

 横浜は日本の「近代水道」発祥の地。イギリス人技師、ヘンリー・スペンサー・パーマーの指導で1887(明治20)年に敷設された。まず野毛山浄水場が造成されたが、関東大震災で壊滅。1927(昭和2)年、一時的に水をためる配水池へと姿を変えた。

内径約41㍍の配水池=須賀川理撮影

 配水池の総貯水量は1万3700㌧で、主に市中心部に届けられた。67年には隣地に新しい配水池が建設されて併用されたが、老朽化もあり2001年に役割を終えた。

 耐震基準を満たさないなどの理由で普段は立ち入りできないが、許可を得た。細いらせん階段を下りると、ひんやりとした空気に包まれる。明かりを照らすと、内部を迷路のように仕切る壁や柱が浮かび上がり、地下宮殿のような空間が広がった。

ドームの中は配水池へと続く階段のみのシンプルな構造=須賀川理撮影

2024年9月8日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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