廊下が突き出て寸断されたような本館南端部分

【レトロの美】
青年の城 滋賀県竜王町
突き出る廊下

文:北村隆夫(毎日新聞記者)

建築

 滋賀県竜王町にある青少年宿泊研修施設「青年の城」。416㌶という広大な県希望が丘文化公園の敷地内にある。設計は「都市科学研究所」に所属していた建築家、中嶋龍彦らが担当した。

本館ロビーには高さ約5㍍のダビデ像のレプリカが設置されている

 開館は1972年。本館は公共スペースや宿泊室、研修室、大ホールなどがコの字形に配置されている。広場が生まれ、周囲の自然と調和している。廊下は建物の端に突き出ていて、切断されたようだ。増殖していくイメージで、黒川紀章らによる建築運動「メタボリズム」(新陳代謝)の影響を感じさせる。また、吹き抜けのロビーに設置された空調設備や、入り口の円形扉は近未来的なデザインだ。

ロビーにあるカプセル型の空調設備

 開館以来、日帰りも含めて300万人以上が利用したが、老朽化が進む。円柱の周りにカプセル状の宿泊室を多数取り付けた高さ約50㍍の「青年の塔」は2005年、惜しまれつつ解体された。現在は20人部屋が中心だが、少人数向けの部屋を増やすなど、多様なニーズに対応できる施設を目指し、27年度以降の建て替えが決まっている。

2024年8月4日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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