温泉宿や民家が並ぶ一角では、黄土色のスクラッチタイルで覆われた建物が目を引く。別府市公会堂(大分県)は1928(昭和3)年、市政5周年記念の行事「中外産業博覧会」に伴い、建設された。設計を担当したのは、逓信省の建築家、吉田鉄郎。後に東京中央郵便局や大阪中央郵便局も手がけている。
現在は改修され、中央公民館、市民会館が入る。外観は、半円アーチ形の窓がアクセントを利かせている。正面階段を上がると金属製の扉がどっしりと構え、来館者を迎え入れる。
地下1階(現在の1階)にあった大食堂には同博覧会で一度に約600人が列席したという。当時としては珍しい洋食を堪能できたうえ、ビリヤード室や浴場もあった。2階の大ホールは天井部分の曲線が美しく、バルコニー席は九州初とされる。建設当初に設置された木製の座席が今も残っている。
2階と3階の踊り場には月と星をモチーフにしたステンドグラスが青色に輝く。天井飾りや照明器具などに星がちりばめられ、それらを探すのも楽しい。
2024年7月14日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載