青空に映える建物外観

【レトロの美】
神戸文学館 神戸市灘区
スマートな屋根

文:梅田麻衣子(毎日新聞記者)

建築

 今秋、築120年を迎える神戸文学館(神戸市灘区)は、緑豊かな王子公園の西南側にたたずむ。赤レンガ造りの外壁と、角張ったスマートな屋根が青空に映える。初期英国風のゴシック様式で、上部はアーチ形の梁(はり)が天井を支えている。

天井を支えるアーチ形の梁

 キリスト教教育を進める関西学院(のちに大学)のチャペルとして、イギリス人のM・ウィグノールの設計により建てられた。同学院は1929年、兵庫県西宮市へ移転したが、チャペルはこの地にとどまった。太平洋戦争時の神戸空襲により、尖塔(せんとう)部分や屋根などが損なわれたが、その後過去の写真などを基に復元された。しかし外壁のレンガの一部には、焼夷(しょうい)弾の痕跡が残り、戦災の悲惨さを今に伝えている。

 戦後は図書館やギャラリーとして親しまれた。95年の阪神大震災も乗り越え、2006年には神戸ゆかりの文学者たちの活躍を伝える神戸文学館に生まれ変わる。08年、国登録有形文化財に指定された。戦災や震災を経てもなお、優美な姿で神戸の風景に彩りを添えている。

やさしい光が館内に差し込む

2024年7月7日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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