錦帯橋をイメージさせる3連アーチの正面玄関と半円アーチの窓が印象的な「JR西岩国駅舎」

 乗降客の減少で無人駅となった駅舎の待合室の電光掲示板が列車の到着を知らせ、下校する高校生たちが改札口を抜けていった。JR西岩国駅(山口県岩国市)は、1929(昭和4)年に国鉄「岩国駅」として開業した。

 オレンジ色の瓦屋根に特徴的な正面玄関があるこの駅は、岩国の表玄関だった。国指定の名勝「錦帯橋」を訪れる大勢の観光客も降り立った。しかし、42年に、繊維や製紙などの産業が発展した地域にある麻里布(まりふ)駅に岩国駅の名称を譲り「西岩国駅」と改称された。

プラットホームの屋根は木製の柱で支えられている

 重厚な3連アーチの玄関と半円アーチの窓は錦帯橋を思わせ、待合室のベンチは「平成の掛け替え」で解体された錦帯橋の部材が使われている。プラットホームの屋根は木の柱で支えられ、鉄骨がむき出しになった構造の跨線橋(こせんきょう)からは武骨さを感じる。

駅の跨線橋から、のどかな景色が眼下に見えた

 駅舎は、79年に開業50周年を記念し照明器具や改札口を開業当時の姿に復元。2004(平成16)年に同市に譲渡され、現在は「ふれあい交流館西岩国」になった。06年に国の登録有形文化財に指定された。

開業当時の姿に復元された改札口

2022年6月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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