木々に囲まれている愛知県緑化センター本館(同県豊田市)の外観は、ひっそりと緑の中に溶け込んでいる。開園1年前の1975(昭和50)年、造園学者の中村一氏と建築家の瀧光夫氏の共同設計で建てられた。
外観にはハーフミラーガラスが使われ、樹木をガラスに映して周囲の環境と同調するようにデザインされている。案内板は1、2、3階と表示しているが、構造は鉄筋コンクリート及び鉄骨造りの2階建て(一部中2階)となる。
南側のエントランスから館内に入ると、高さ12・4㍍の広大な吹き抜け空間「グリーンホール」が来館者を迎える。ガラス張りの天井から降り注ぐ柔らかな陽光が樹木を照らす。北側は一面がガラス張りで、砂岩が敷き詰められた屋外の広場へと連続するように視界が広がる。
杉林からは何段も連なった小さな人工の滝「カスケード」の水が広場へと流れ込む。その水は池に集まり、川となって風とともに本館内に流れ込む。まるで建物と自然が融合した空間を演出しているかのようだ。
2022年4月10日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載