聖障は「最後の晩餐」(中央上から二つ目)など30枚の聖像からなる

 「ロシア・ビザンチン」様式の京都ハリストス正教会生神女(しょうしんじょ)福音聖堂(京都市中京区)は、古都の街並みにたたずむ姿が美しい。国内にある日本正教会の本格的木造聖堂としては現存最古。「ハリストス」はキリストのギリシャ語読みで、「生神女福音」は聖母マリアの受胎告知を意味する。

高さ22.3メートルの鐘楼尖塔を備えた聖堂

 日本に正教を伝道したロシア人宣教師、ニコライから渡されたひな型図面を基に、京都府技師の松室重光が実施設計し、1903(明治36)年に完成した。建物を上から見ると十字形で、屋根にはタマネギ形をしたクーポルが載り、高さ22・3㍍の鐘楼尖塔(せんとう)が備わる。ロシアで描かれ移送されてきた「最後の晩餐(ばんさん)」など30枚の聖像(イコン)を収めた聖障(せいしょう)(イコノスタス)は荘厳である。主に信者が集い祈る聖所(せいじょ)に設置され、その奥にある聖職者が祈りをささげる至聖所(しせいじょ)とを区切っている。

 第二次世界大戦末期には、聖鐘の供出や空襲による焼失を危惧しての疎開準備で聖障が傷付くなど、困難を乗り越えてきた。近年はロシアや東欧出身者も多く集まる。

洗礼を受けていない人が祈る啓蒙(けいもう)所の扉

2022年1月23日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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