1階の倉庫には群書類従の版木約1万枚が保管されている。暗がりの中、長時間露光で撮影すると版木の姿が浮かび上がった

 光が入るのを極力避けた空間に、大量の版木が眠っているかのように陳列されていた。温故学会会館(東京都渋谷区)は、全盲の国学者、塙保己一(はなわほきいち)(1746~1821年)が編さんした江戸時代の大規模な双書「群書類従」の版木を管理・保管するため、1927(昭和2)年に建てられた。

薄明かりに浮かぶ精巧に彫られた文字列

 保己一は34歳の時に、全国に散在していた古代から近世までの貴重な史書、秘伝書、文学作品を編さんし、出版することを決意。74歳の時に「群書類従」を完成させた。全巻で666冊に上る。書物の散逸を防ぎ、今も利用できるようにした意義は大きい。有償で和紙に手刷りしたものが購入できる。

 外観が左右対称の会館は鉄筋コンクリート造りで、耐震耐火に優れている。1、2階にある倉庫には「万葉集」や「徒然草」などを含めると約2万枚の版木が保管されており、内部に足を踏み入れると、その様子に圧倒される。

 「群書類従」の版木は57(昭和32)年に国の重要文化財に、会館は2000(平成12)年に登録有形文化財になった。

地上2階、一部3階建ての建物外観

2022年1月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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