シンプルで温かみのある空間が広がる礼拝堂

 東京・麻布は坂の多い街として知られる。緑豊かな有栖川(ありすがわの)宮(みや)記念公園脇の南部坂沿いには、日本基督教団麻布南部坂教会(東京都港区)が周囲の景観と調和するように建っている。米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ボーリズの設計で、1933(昭和8)年に完成した。

 木造3階建てで、1階は幼稚園で、2階が礼拝堂、3階が塔屋となっている。礼拝堂入り口は坂に面しており、三角アーチのドアを入ると、使い込まれた長椅子が日差しを浴びていた。

礼拝堂から上階へ向かう階段上部にある円窓

 礼拝堂の天井は「シザーズトラス」と呼ばれるはさみを広げたような梁(はり)で屋根を支えている。「トラス」は部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式で、強度に優れ、柱のない広がりのある空間を作り出す。

 これまでに2度の改修工事を行ったが、教会の外観、内観などは完成当時の面影を色濃く残している。同教会の松谷祐二牧師は「素朴で懐かしい感じのする建物なので、来ていただければほっとされると思います」と話している。

坂沿いに建つ教会

2021年10月31日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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