屋根の形も印象深い建物外観=尾籠章裕撮影

 JR市川駅から北東へ歩くと、高級マンションや家屋が並ぶ住宅街にたどり着く。その中に、ひときわ個性的な建物が目に入る。「西洋館俱楽部」(千葉県市川市)だ。

 1927(昭和2)年に完成。衆院議員を務め実業家でもあった「丸水渡辺商会」の渡辺善十郎社長が、ゲストハウスとして手掛けた。

 木造3階建てで、外観は「赤い帽子」のような三角屋根とベランダ、規則的に配置された窓がすっきりとした印象を与える。出窓状に張りだした玄関ホールに入ると、やわらかい光が差し込んでくる。階段の手すり子にも凝った意匠が施されている。階段を上がった2階は1階の洋間とは異なり、畳敷きの和室空間が広がる。外観とともに、和洋折衷の様式美を持つ。

1階の窓枠。淡い光が室内を照らす=尾籠章裕撮影
2階の和室からの眺め=尾籠章裕撮影

 善十郎氏の孫で洋館を引き継いだ俊司氏によると、「ただ保存するだけではなく、多くの人たちに建物を見てほしい」と建物西側に音楽ホールを増設した。玄関を入って懐かしさあふれる空間を味わいながら、ホールへと向かうぜいたくな一時を楽しめる。99年に国登録有形文化財になった。

2025年5月4日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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