釧路湿原の南西端の高台に建つ釧路市湿原展望台(北海道釧路市)は、赤いレンガの土台に釣り鐘のような展望室が載っている。湿原に多く群生するスゲ属植物が半円状の株となった「ヤチボウズ」をモチーフに設計された。一方、その内部は、外観から想像できない近未来的な雰囲気に包まれている。
展望台は3階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造りで、1984(昭和59)年に完成した。1階はレストランやショップが入る。1階中央から2階に上がる橋状の通路周囲には「湿原の鼓動」と呼ばれる生態ジオラマが広がり、見上げると、天井の曲線を重ねた造形に圧倒される。
2階には湿原の植生や周辺の遺跡を解説する資料展示室、3階には360度の眺望が広がる展望ブース、屋上に展望バルコニーもあり、四季折々の湿原の変化を楽しむことができる。
設計したのは同市出身の毛綱毅曠(もづなきこう)。釧路市立博物館では日本建築学会賞を受賞するなど、市内には風土と独自のイメージが融合した建築作品が今も残る。
2023年3月12日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載