高橋由一「本牧海岸」1877年

◇高橋由一 藤島武二 百武兼行 彭城貞徳

◇29日開幕 北九州市立美術館

 幕末から明治にかけて活躍し、日本洋画の礎を築いた画家たちの作品を紹介する特別展「日本近代洋画への道―山岡コレクションを中心に」が29日、北九州市立美術館(本館)で開幕する。「日本近代洋画の父」と称される高橋由一ゆいちの傑作「鮭図さけず」をはじめ、黒田清輝、藤島武二、青木繁らが描いた約150点の作品を通して、西洋絵画の写実技法、迫真的表現に挑んだ画家たちの情熱と足跡に迫る。展覧会の見どころ、日本の初期洋画の魅力を同館の奥田亜希子・学芸員に寄稿してもらった。

 幕末・明治期は、日本史においても激動の時代だが、開国と同時期に本格的に導入された洋画のたどった道のりも同様に起伏に富んだものだった。本展では3章に分けて時代順にその流れを追っていく。まずは、書籍の挿絵や版画などを手本に洋風表現を模索した画家たちの時代。次に、維新後政府が開設した工部美術学校のイタリア人画家フォンタネージの指導や、ヨーロッパ留学によって本格的な西洋美術教育が実現する時期。そして明治15年(1882年)頃からの洋画排斥・低迷の時期を挟んで、フランスから帰朝した黒田清輝がもたらした革新的な外光表現と近代的な制度によって、国内の洋画各派が競合・花開いていく時期である。

高橋由一「鮭図」1879-80年
藤島武二「婦人像」1927年ごろ

 貴重な初期洋画が集う中でも、油彩画、素描など10点がそろう高橋由一の作品群は、見どころの一つである。由一は、重要文化財「さけ」、「花魁おいらん」(いずれも東京芸術大蔵=本展未出品)などの日本美術史上重要な作品を描いただけでなく、画塾開設、展覧会開催、画材の国産化推進、雑誌刊行など様々な洋画拡張事業を行った。新しい技術であった油彩画の表現力を普及する意図は、日本人にとって身近なものを迫力ある写実描写で捉えた「鮭図」、フォンタネージの影響を感じさせる詩情豊かな風景画「本牧海岸」にも見ることができる。

百武兼行「ブルガリアの女」1882年

 また、日本近代洋画史を彩る九州出身の洋画家たちにも改めて注目したい。まずは、外光描写や明るい色彩を特徴とする「外光派」の表現をもたらし、洋画界に新風を吹き込んだ黒田清輝と盟友の久米桂一郎。そして、外光派の表現を引き継ぎながら、浪漫主義を代表する作品を多く生んだ藤島武二と青木繁の作品も見逃せない。さらに、時代をさかのぼると、佐賀鍋島藩主の側近として岩倉使節団にも加わり、三度渡欧した百武兼行ひゃくたけかねゆきがおり、「ブルガリアの女」は、最後のローマ留学中に描かれた貴重な作例である。百武は、のちに文展の中心的人物として活躍した同郷の岡田三郎助がその絵を見て洋画家を志す契機を作った人物でもある。また、長崎に生まれ、由一の画塾、工部美術学校というエリートコースを進みながら、中央画壇を離れて活動した異色の画家、彭城貞徳さかきていとくの「油絵屏風びょうぶ」も当館では初めて紹介する。

彭城貞徳「油絵屛風」

 近年、日本近代洋画は、その質の高さと希少性から、国際美術市場でも注目を集めているという。そんな洋画の源流ともいえる作品たちをぜひ本展でご覧いただきたい。

※作品はすべて笠間日動美術館蔵

◆関連イベント

◇鮭図に挑戦!? おさかなオーナメント(装飾品)作り
5月10日(日)午後2時~(約1時間)
エデュケーションルームA
※参加無料、事前申し込み不要。先着50人まで。

◇学芸員によるギャラリートーク
5月17日(日)、6月7日(日)
各日午後2時~(約30分)
展覧会場内
※事前申し込み不要。本展観覧料が必要。

◇ミュージアムコンサート
「近代洋画の世界を彩る 箏(こと)の響き」
5月24日(日)午後2時~(約30分)
NPO法人「和楽啓明」の演奏
エントランスホール
※参加無料、事前申し込み不要。

◇キッズデー!
6月6日(土)
展示室でのおしゃべりも大丈夫。みんなでアートを楽しもう。

INFORMATION

特別展 日本近代洋画への道 山岡コレクションを中心に

◇会期
29日(水・祝)~6月21日(日)
※月曜休館。ただし、祝日の5月4日は開館し、同7日(木)が休館

◇会場
北九州市立美術館(本館)
戸畑区西鞘ケ谷町21の1、093・882・7777

◇観覧料
一般1500(1200)円、高大生1100(800)円、小中生900(600)円
※かっこ内は前売りおよび20人以上の団体料金。

主催 日本近代洋画展実行委員会(北九州市立美術館、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社)
後援 九州旅客鉄道、西日本鉄道、北九州モノレール、筑豊電気鉄道
企画 公益財団法人日動美術財団、笠間日動美術館

2026年4月28日 毎日新聞・西部朝刊 掲載

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