髙島野十郎は詩人であった長兄の影響からか、青年時代から仏教に深く傾倒していた。そのため、寺社や地蔵などを描いた作品に加えて、一見すると普通の静物画や風景画にも仏教的な考え方を感じさせる作品が多々存在する。
本作は、野十郎が好んでたびたび描いたサクランボが主題となっている。赤い実が愛らしい作品であるものの、手前に置かれたサクランボは黒っぽく変色して腐りかけているように見える。画面の最も目立つ場所にあえて腐った果実を置いたのは偶然ではないであろう。命の盛りとその先を見つめた、野十郎の仏教的思想が垣間見える作品である。
INFORMATION
没後50年 髙島野十郎展
<会 期>6月21日(日)まで
<会 場>大阪中之島美術館(大阪市北区中之島4)
<問い合わせ>06・4301・7285(大阪市総合コールセンター)
2026年4月16日 毎日新聞・大阪版 掲載