◇18日から京都文化博物館 担当学芸員が語る魅力
特別展「原安三郎コレクション 北斎×広重」が18日、京都文化博物館(京都市中京区)で開幕する。実業家の原安三郎氏(1884~1982年)が収集した浮世絵コレクションから、葛飾北斎や歌川広重の名所絵を中心に、約220件を展示する。本展の見どころを、同館学芸員の有賀茜さんに寄稿してもらった。
◇千絵の海 日本の景勝 あふれる発想と表現力
本展で紹介する原安三郎コレクションは、質・量ともに国内屈指の浮世絵コレクションといえるだろう。北斎と広重の主要な名所絵シリーズがそろいで、網羅的に所蔵されている。
たとえば北斎の「千絵の海」というシリーズをご存じだろうか。有名な「冨嶽三十六景」のあとに制作された揃物である。海のように広く、深い知恵を指す言葉「知恵の海」をもじった題がつき、漁の様子を取り上げた作品群だ。北斎の大胆な発想を堪能できるシリーズとして知られる。「総州利根川」は、四つ手網を引き上げる漁師が題材だ。全身を使って、ぐっと網を引く姿の緊張感と、ゆらゆらと揺れる波の表現につい引き込まれる。網が透けているように見えるのは、ぼかし摺りという技術である。本展では前期と後期に分けて、現在知られている「千絵の海」シリーズ全10点をご覧いただく。
さらに今回の展示でご注目いただきたいのは、「諸国瀧廻り」である。縦長の画面を生かし、大小さまざま、想像上の滝までも登場する。「木曽海道小野ノ瀑布」では、岩場が途切れて空中から突然落ちてくるような滝が印象的だ。旅人たちの足元をくぐって流れていく川のグラデーションにも、ぜひご注目いただきたい。

◇東海道五拾三次之内 「動」と「静」 雨の音も聞こえるよう
北斎を「動」とすれば、広重は「静」である。動きがないという意味ではなく、静かに耳を傾けるべき味わいがある。代表作「東海道五拾三次之内」の中でも有名な「庄野 白雨」からは降りしきる雨の音、「掛川 秋葉山遠望」からは吹きすさぶ風の音が聞こえてくるようだ。


一方で「冨士三十六景」というシリーズがある。本シリーズでは原コレクションの魅力である、良好な色彩を楽しむことができる。「はこねの湖すい」は、画面の天と地(上下)や湖畔に深い藍のぼかしを施し、岩肌と空の一部には黄色、山の緑には雲母摺が輝きを見せる。モダンな印象の作品に驚かれるかもしれない。湖水のきらめきをとどめたような、爽やかな作品である。

初夏の京都で、北斎・広重とともに全国各地の景勝を楽しんでいただければ幸いだ。
*掲載作品は全て前期展示、中外産業株式会社原安三郎コレクション蔵
INFORMATION
特別展「原安三郎コレクション 北斎×広重」
◇会期
18日~6月14日(5月17日まで前期、同19日から後期展示)。月曜休館(5月4日は開館し、7日休館)。入場は10~17時半(金曜は19時まで)
◇会場
京都文化博物館(京都市中京区三条高倉、電話075・222・0888)
◇観覧料
一般1900(1700)円▽大高生1300(1100)円▽中小生700(500)円▽未就学児無料。先行ペア割チケット3200円(2枚組み)
※カッコ内は前売り、20人以上の団体料金(前売り・先行は17日まで販売)。詳細は展覧会公式ホームページをご確認ください。
主催 京都府、京都文化博物館、毎日新聞社
特別協賛 日本化薬
協賛 大和ハウス工業
特別協力 中外産業
2026年4月15日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載