◇幸せあふれる春の予感
春告鳥(はるつげどり)とは鶯(うぐいす)の異名。初鳴きに思わず振り向いたのだろうか、娘の視線が季節の使者の姿をとらえる。娘はおそろいの鶯色の装いで、自身も春の精のようである。両者のほかは、芽吹いたばかりの柳が微風に揺れるだけの簡素極まりない構図だが、淡い彩色を墨と紅が引き締めて目に心地よい。
片膝をつく、あるいはうずくまる姿態に小村雪岱(せったい)は美を感じてしばしば描いたが、本作の女性像がなかでも表情豊かなのは、春の訪れを歓迎する理由があるからだろう。願掛けか、あるいは待ち人か。想像しつつ観(み)る者の心にも幸せな予感を運んでくれる、愛すべき佳品である。
INFORMATION
「密やかな美 小村雪岱のすべて」 千葉市美術館
<会期>6月7日(日)まで。会期中、展示替えあり
<会場>千葉市美術館(千葉市中央区中央3)
<問い合わせ>043・221・2311
美術館ホームページはこちらから
2026年4月18日 毎日新聞・千葉版 掲載