◇震災前の日本橋追慕
柳を透かして見おろす座敷に、三味線と鼓が行儀よく並んでいる。青畳の広さから稽古(けいこ)場と見えるが、奏者は描かれていない。舞台の幕が開いた瞬間のようでもあり、物語を想像させて余韻が深い。
小村雪岱(せったい)は埼玉・川越に生まれ、15歳の頃、後に養父となる書家の学僕となり、日本橋檜物町(ひものちょう)に暮らした。書家にはならず日本画家を志し、大正から昭和にかけて装幀(そうてい)や挿絵で名を成した。
本作は関東大震災で景色が一変したあと、往時を追慕して描いたとされる。筆致が驚くほどに細かく入念なのは、若き日を過ごした日本橋への哀惜が、込められているからだろうか。
◇
展覧会「密(ひそ)やかな美 小村雪岱のすべて」(毎日新聞社など主催)が千葉市美術館で開かれている。主な展示作品を紹介する。
INFORMATION
「密やかな美 小村雪岱のすべて」 千葉市美術館
<会期>6月7日(日)まで。会期中、展示替えあり
<会場>千葉市美術館(千葉市中央区中央3)
<問い合わせ>043・221・2311
美術館ホームページはこちらから
2026年4月15日 毎日新聞・千葉版 掲載