泉鏡花「日本橋」(装幀・小村雪岱) 1914(大正3)年 さいたま文学館=提供写真

 ◇終生変わらぬ鏡花愛

 小村雪岱(せったい)は22歳の頃、憧れの泉鏡花と出会い、終生変わらぬ思慕をささげた。その鏡花の筆による「日本橋」は、雪岱の装幀(そうてい)第1作にして出世作。とりわけ、並ぶ河岸蔵を真正面から無機質に描いて色とりどりの蝶(ちょう)を乱舞させる表紙は、静謐(せいひつ)でありながら、鏡花世界の面妖や凄艶(せいえん)をはらんで忘れがたい。

 刊行したのは、千章館を立ち上げた堀尾成章。文芸書に挑戦するにあたり、東京美術学校を卒業しても芽の出ない雪岱を抜てきした堀尾もまた、鏡花愛を共有する同志であった。旅をともにするほど親しかった3人の、互いへのリスペクトに支えられた1冊でもある。

INFORMATION

「密やかな美 小村雪岱のすべて」 千葉市美術館

<会期>6月7日(日)まで。会期中、展示替えあり
<会場>千葉市美術館(千葉市中央区中央3)
<問い合わせ>043・221・2311
美術館ホームページはこちらから

2026年4月17日 毎日新聞・千葉版 掲載

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