◆京都市京セラ美術館で13日開幕
特別展「民藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」が13日、京都市京セラ美術館(京都市左京区)で開幕する。思想家の柳宗悦らが「民衆的なる工芸」を「民藝」と称して始まり、衣食住の概念を変革させていった「民藝」運動。誕生してから100年となることを機に、京都と民藝との関わりをたどる。見どころを同館の後藤結美子・学芸員が紹介する。
◇本展を担当 後藤結美子学芸員 柳と河井 結んだ木喰仏
2025年は、思想家の柳宗悦や陶芸家の濱田庄司、河井寬次郎らが1925年に「民藝」という言葉を創出してから100年にあたります。本展は、京都の地で終生変わらぬ縁を結ぶことになる柳、濱田、河井らのつながりから生まれた「民藝」運動の草創期に焦点を当て、その思想の原点と京都での広がりをたどる展覧会になります。

柳らは、それまで誰も関心を注ぐことのなかった、無名の工人が作った雑器の美に新たな価値を見いだしました。この「民藝」の歩みは、明治末から大正、昭和と近代化が推し進められる時代に重なり、衣食住の概念を変革させ、その活動は京都から日本、そして世界に向けて広がっていきます。
本展では、まず「民藝」誕生のきっかけとなった木喰仏に焦点を当てます。1923年に関東大震災で被災し、京都に転居した柳は、翌年、偶然見かけた木彫仏に一目で魅入られます。柳は作者も不明であったこの像の研究に打ち込み、木喰上人という作者の名だけでなく、日本各地で500体以上の木喰仏を発見しました。木喰仏は、京都で柳と河井が意気投合するきっかけにもなりました。

柳の「民藝」論の構築は、ほぼ京都時代に形成されますが、その理論は早い時点で実践の場を見いだします。「民藝」運動の目的は、古い雑器を賛美するだけでなく、現代の民藝を作ることでもありました。京都で新たに民藝を創作するため、青田五良や黒田辰秋による上加茂民藝協団が結成されます。青田や黒田は中世のギルド組織を手本に共同生活を行いながら、織物や木工品を制作しました。
◇優品の数々、建築の再現
その他、本展では、京都の朝市を起点に、柳らにより日本全国から集められた収集品の数々、民藝運動を柳と共に推進した個人作家、河井、濱田に加えて富本憲吉、バーナード・リーチ、棟方志功、芹沢銈介らの優品を展示します。また、運動の初期から関わった精神科医・式場隆三郎の自邸は、柳や濱田が設計にかかわり、戦前の民藝建築の到達点を示しています。この自邸の一部を展示室内で再現いたします。


柳らの「民藝」運動に共鳴し、京都でも運動の推進者や支援者が現れました。英文学者の寿岳文章は、柳や民藝同人らとの関わりの中で、書物の美と和紙の研究を究めます。また京菓子の鍵善良房は、黒田辰秋に店の大飾棚や名物のくずきり容器を注文しました。牛肉水炊きの十二段家の二代目当主は、無名だった棟方志功を支援し、選び抜かれた民藝の品々を収集しました。また河井の弟子で、陶芸家の上田恒次は、建築にも才能を発揮し、民藝風の建築設計を推し進めました。このように京都という土地が民藝の歩みに深く関わってきた事例を振り返ります。

「民藝」の思想は京都を出発点にして、人々に受け継がれ、現在も私たちの生活に息づいています。「民藝」の、身近なものの美しさを見いだす視点にならって、日々の何気ない暮らしに豊かさを見いだすきっかけになれば幸いです。

◇各地の民藝品も販売
会場特設ショップでは、公式図録やオリジナルグッズのほか、人気染色家・石北有美さんが本展のために制作した手ぬぐい(税込み2650円)やトートバッグなどを販売します。各地の民藝品も取りそろえます。
INFORMATION
特別展「民藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」
◇12月7日まで
会 期:13日(土)~12月7日(日)。
月曜休館(祝日の場合は開館)。入場は10時~17時半。
会期中、一部展示替えあり
会 場:京都市京セラ美術館 本館南回廊1階
(京都市左京区岡崎円勝寺町、電話075・771・4334)
観覧料:一般2000(1800)円▽大学・高校生1500(1300)円▽中学生以下無料。
カッコ内は前売り、20人以上の団体料金。
前売り券は12日(金)まで販売。
※チケットやイベントの詳細は同館サイトをご確認ください。
主 催:京都市、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿、毎日新聞社、京都新聞
制作協力:NHKプロモーション
協 賛:京都薬品工業株式会社、一保堂茶舖、ギャラリー・セントアイヴス
2025年9月10日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載