古い土蔵を利用したギャラリー「ARTRO」で開かれている見附正康さんの展覧会=山田夢留撮影

 伝統的な「九谷赤絵」の技法で独自の世界を表現する陶芸家、見附正康さん(49)の関西初となる個展が、京都市中京区のギャラリー「ARTRO」で開かれている。大皿をキャンバスに繰り広げられる文様は極めて細密で、肉眼では見えないものもあるほど。下書きなしのフリーハンドで描かれた華麗な幾何学模様は、見る者の目を引きつけてやまない。6日まで。

 見附さんは石川県加賀市出身。子どもの頃から書道が得意で、高校卒業後に九谷焼の道へ進むと、極細の筆で描く超絶技巧「赤絵細描」を習得した。九谷赤絵の世界では中国の古典柄などが一般的だが、見附さんは約20年前から独自の模様を手がけてきた。

 本展には新作を中心に大小の作品を出品。中でも大皿の新作2点が目を引く。1点は三つの円を中心にらせん状に文様が描かれ、もう1点は左右に奥行きを感じさせる文様が描かれている。どちらも、その前に立つと吸い込まれるような不思議な感覚に陥る作品だ。絵画のように壁にかけられて展示され、裏側に描かれた文様も見ることができる。

 手描きとは思えないような精巧さだが、近くで見ると人の手による絵の具の質感が感じられる。「筆で描くことがとにかく好き」だと見附さん。「時間がもったいない」と下書きはせず、頭の中にある文様を描いていく。オリジナルの文様を手がけるようになったのは、「古典的な文様もそれぞれの時代に即していたはず。それならば今、自分が生きている時代に、かっこいいとかきれいだとか思える柄を描くのが自分らしい」と考えたからだという。

 文様は常に進化を続けており、以前は一つの中心に向かっていた文様が複数の中心を持つようになった。大皿の作品は少しずつ深くなってきているといい、見附さんは「立体的になって、いろいろな見方ができるので面白い」と話す。

 入場無料。午前11~午後6時。月・火曜は休み。ARTRO(075・585・4554)。

2025年7月1日 毎日新聞・京都版 掲載

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