アンディ・ウォーホルの代表作『マリリン』を鑑賞する来場者=宮本勝行撮影

 1960年代に米国をはじめ世界で一大ムーブメントを巻き起こしたポップ・アートを紹介する特別展「ポップ・アート 時代を変えた4人」が17日、北九州市立美術館(本館)で開幕する。ポップ・アートの旗手と称されるロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズの4人の作品を中心に、版画やポスター、服飾など約120点を展覧する。ポップ・アートが生まれた背景、作家の特色、展覧会の見どころについて、清田幸枝・同館学芸員に寄稿してもらった。

 ◇身近な題材 鮮やかに

 ポップ・アートは、1950年代半ばのイギリスを発祥とし、60年代のアメリカで最盛を迎えた美術の動向です。題材となるものは、マスメディアにあふれる大衆的イメージや、身のまわりにある日用品など。人々の生活に直結したシンボルを美術の中に取り入れ、色鮮やかに、時にユーモアや皮肉を交え現代社会の姿を描いてきました。

アンディ・ウォーホルの『ザ・スーパー・ドレス』(左)とジェームズ・ローゼンクイストの『ペーパー・スーツ』=宮本勝行撮影

 本展では、アメリカのポップ・アートを牽引けんいんした、リキテンスタイン、ウォーホル、ラウシェンバーグ、ジョーンズを、同時代に脚光を浴びたザ・ビートルズになぞらえて「FAB4(=素晴らしき4人)」と呼び、今なお多くの人をきつけるポップ・アートの魅力に迫ります。

 60年代のアメリカは、急激な経済成長を遂げたことで大量生産・大量消費社会が到来し、環境問題や、反戦運動など社会運動が相次いで起こった激動の時代でした。アーティストたちは当時の社会情勢を美術のなかに反映し、新たなアートシーンを築いていきました。なかでもポップ・アートの先駆者と言われたのが、ジョーンズやラウシェンバーグです。ジョーンズは、国旗や数字など誰もが知る普遍的なイメージを絵画に持ち込み、その意味作用を問う作品を制作。ラウシェンバーグは、マスメディアに登場する写真を取り入れることで、芸術と生活を結びつける絵画を発表し注目を集めます。

 リキテンスタインは、コミックの一コマを絵画に転用させた作品を制作。印刷物の網点や太く黒い輪郭線による独自のスタイルは、これまでの抽象表現主義に代わるものとして評価を確立しました。ウォーホルは、ザ・ローリング・ストーンズなど多くのミュージシャンのアートワークを手がけ、ファッションにおいても、服飾デザインや商業空間の仕事を展開するなど、アーティストが描く鮮烈な表現が、音楽やファッションにも大きな影響を与えました。

 また、本展では、同時代に活躍した他4人を特別ゲストとして紹介します。言葉や記号を絵画に再構成したロバート・インディアナ。大衆的な題材を組み合わせ、現代社会の様相を描いたジェームズ・ローゼンクイスト。アメリカの現代的な生活と西欧的表現を組み合わせたトム・ウェッセルマン。自身が愛用する日用品を作品に取り入れたジム・ダインなど、ポップ・アートを代表する名品が一堂に会します。多様な作品を通して、ポップ・アートの表現の広がりをお楽しみください。

 ◇講演会やコンサート イベントも充実

★関連イベント

□記念講演会

6月7日(土)午後2時~同3時半

池上裕子・大阪大教授が「ジャスパー・ジョーンズと日本の前衛:東京ポップとの出会いを中心に」の演題で。定員80人。聴講無料。当日午後1時から整理券を配布。

□美術館コンサート「2バイオリン×ピアノで聴く ポップ・アートの時代」

6月14日(土)午後2時~同3時

原雅道さん、上野美科さんのバイオリン、西書子さんのピアノで。ガーシュイン「アイ・ガット・リズム」、カーペンターズ「トップ・オブ・ザ・ワールド」など。無料。

□学芸員によるギャラリートーク

5月18日(日)▽5月25日(日)▽6月15日(日)午前11時(約30分)。

無料。展覧会チケットが必要。

★タイアップ企画

□小倉昭和館「アートのお値段」上映

5月31日(土)~6月13日(金)

アートとお金の関係に迫ったドキュメンタリー映画(2018年・米国)。観覧料1000円。火曜休館。5月31日の上映後、美術館学芸員によるトークイベントもある。小倉昭和館(093・600・2923)。

INFORMATION

特別展「ポップ・アート 時代を変えた4人」

会期  5月17日(土)~6月29日(日) ※月曜休館
会場  北九州市立美術館(本館)(戸畑区西鞘ケ谷町21の1、093・882・7777)
観覧料 一般1500円(1200円)、高大生1100円(800円)、小中生900円(600円)
※かっこ内は前売りおよび20人以上の団体料金。

主催   ポップアート展実行委員会(北九州市立美術館、毎日新聞社、読売新聞社)
後援   アメリカ大使館、スペイン大使館、九州旅客鉄道、西日本鉄道、北九州モノレール、筑豊電気鉄道
協力   日本航空
企画協力 ブレーントラスト

2025年5月16日 毎日新聞・西部朝刊 掲載

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