国重要文化財「色絵芥子文茶壺」野々村仁清、江戸時代前期

 企画展「琳派のやきもの-響きあう陶画の美」が、北九州市門司区東港町の出光美術館(門司)で開かれている。「文人乾山の名陶」「仁清・乾山の連環」「交響をなす陶画」「王朝文学への憧憬(しょうけい)」の4章から成り、同館が所蔵する江戸時代の焼き物、絵画など約40件。デザイン的で装飾性に富んだ芸術が花開いている。

 京都の本阿弥光悦と俵屋宗達を祖とし、宗達の100年後に活躍した尾形光琳の名に由来する琳派。狩野派と違い、血族的つながりはなく、先人に私淑し、学びながら、独自のアレンジを利かせたスターたちが時代を超えて登場した点に最大の特徴がある。江戸時代に琳派という概念はなく、1972年に東京国立博物館で特別展「琳派」が開催されたのを機に、一般に浸透したといわれている。

 琳派といえば、絵画を思い浮かべがちだが、本展は焼き物を主人公に据えている。光琳の弟、尾形乾山(けんざん)(1663~1743年)の「銹絵(さびえ)染付金銀白彩松波文蓋物(ふたもの)」(江戸時代中期)、野々村仁清(生没年不詳)の「色絵芥子文茶壺(いろえけしもんちゃつぼ)」(江戸時代前期)の2点は国重要文化財。「銹絵~」は染付、金銀彩などで重ね描かれた松林(表面)がどっしりとした風情を示し、白化粧の地に染付と金彩で表された波文(内面)は涼しげなリズムを奏でている。静と動、重厚さと軽やかさの対比の妙。絵に力が宿る。

国重要文化財「銹絵染付金銀白彩松波文蓋物」尾形乾山、江戸時代中期

 その乾山が師事したのが、華やかな絵付けの京焼を大成させた仁清である。名は京都の「仁和寺」と、通称の「清右衛門」の頭文字を合体させたもの。日本陶磁史上、並ぶ者がいない天才で、代表作のうち2点が国宝、20点が国重要文化財に指定されている。

 本展の呼び物の一つ、「色絵~」は葉茶壺として重宝されたルソン壺に形をならいつつ、絵付けは江戸時代初期の装飾屏風(びょうぶ)の意匠を思わせ、純日本的な色絵を創出している。胴のまわりには赤を中心とした色鮮やかな芥子の花々。裾を黒くすることで、花の色彩美を際立たせている。本作は高さが43.4㌢。仁清の茶壺としては最も大きい。これだけのサイズの壺を薄く成形するろくろの技術の高さは特筆に値する。

 絵画も焼き物と共鳴している。特に俵屋宗達の六曲一双の「扇面散貼付(せんめんちらしはりつけ)屏風」(江戸時代前期)はやまと絵の系譜に連なるみやびさで、周到な構成力が光る。他に、伝尾形光琳、狩野探幽、鈴木其一ら。巨匠たちの競演が楽しめる。

 23日まで(月曜休館)。同館(093・332・0251)。

2025年3月14日 毎日新聞・福岡版 掲載

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