富岡鉄斎「瀛洲仙境図」(三幅対の内) 大正3(1924)年 碧南市藤井達吉現代美術館蔵

【展覧会】
「没後100年 富岡鉄斎」作品紹介/下
蓬莱に遊ぶ仙人 交友の祝いに

文:豆田誠路(愛知県碧南市藤井達吉現代美術館主任学芸員)

日本美術

 富岡鉄斎が米寿を迎えた大正12(1923)年1月、交友の石川三碧が80歳、夫人が70歳になったことを祝い贈った作品である。

 三碧は三河大浜(現愛知県碧南市)にある九重味淋の当主。鉄斎は明治22(1888)年に三碧邸を訪れて以来、長く親交した。

 この作品は3幅で対をなす。中央には中国の東方の海にあるという三神山の一つ「瀛洲(えいしゅう)」を描くこの絵を、左に「福禄寿図」、右に「西王母図」を配する。三碧を福禄寿、夫人を西王母に見立てて、蓬莱に遊ぶ不老不死の仙人にあやかるようにとの鉄斎らしい構想である。

 大正12年4月に三碧が死去し、この作品が2人の親交を象徴するものとなった。

INFORMATION

「没後100年 富岡鉄斎」展

<会期>11月24日(日)まで
<会場>碧南市藤井達吉現代美術館(碧南市音羽町1、0566・48・6602)

2024年10月21日 毎日新聞・地方版 掲載

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