
2体の武装したハニワとモダンな女性2人。ここは上野の帝室博物館である。この年、「埴輪美」という写真集が出版された。その序文で彫刻家の高村光太郎は、この武人ハニワの単純素朴な表情を「南方で戦う兵士の表情」に重ねて賛美している。絵の作者は、桑原喜八郎。当時、東京美術学校の画学生であった。この作品を描いた翌年、桑原は学徒出陣し、1945年にビルマ(現・ミャンマー)で爆撃弾に遭い、24歳の若さで戦死している。桑原は自身が兵士として南方に赴くことになること、また戦後、この部屋が女性と子どもの姿であふれるようになることを予見していただろうか。
INFORMATION
「ハニワと土偶の近代」展 東京国立近代美術館
<会 期>12月22日(日)まで。会期中展示替えあり
<会 場>東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
<問い合わせ>ハローダイヤル(050・5541・8600)。展覧会公式サイト(https://haniwadogu-kindai.jp/)
2024年10月20日 毎日新聞・地方版 掲載