富岡鉄斎「艤槎図」 大正13(1924)年 京都国立近代美術館蔵

【展覧会】
「没後100年 富岡鉄斎」作品紹介/中
荒海への旅立ち 湖南にはなむけ

文:豆田誠路(愛知県碧南市藤井達吉現代美術館主任学芸員)

日本美術

 戦前の東洋史学者、内藤湖南が子息を伴いヨーロッパへ赴くことになった。そのはなむけとして、大正13(1924)年7月に富岡鉄斎が湖南に贈った作品である。

 「艤槎(ぎさ)図」とは船出の図である。丸木舟に坐す高士と櫓(ろ)を持つ童子は、湖南父子を指す。荒海の中、丸木舟が大洋にこぎ出ている。

 湖南は、鉄斎の長男謙蔵の同僚で、富岡家と親交が深かった。湖南は翌年2月に帰国したが、その時鉄斎は既に亡くなっていた。

 湖南はこの作品の右上の余白に、帰りの船中で作った七言絶句四首をしたためた。こうして湖南父子のみならず鉄斎と湖南の親交を表す作品ともなった。

INFORMATION

「没後100年 富岡鉄斎」展

<会期>11月24日(日)まで
<会場>碧南市藤井達吉現代美術館(碧南市音羽町1、0566・48・6602)

2024年10月19日 毎日新聞・地方版 掲載

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