
愛知県の碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「没後100年 富岡鉄斎」展から、主な展示作品を3回に分けて紹介する。
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伊豆の十国峠から展望し、はるか遠望に富士山を望む。相模湾と駿河湾という東西二つの湾の弧の間に、富士山を中央に据え一層そびえ立たせている。天明3(1783)年に十国峠の山頂に建立された石碑を、屛風(びょうぶ)の第五扇に描き込む。
この絵を描いたのは「最後の文人画家」とたたえられた富岡鉄斎。良い絵を描くには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要であるという先人の教えを重んじた鉄斎は、全国を旅して各地の勝景を探った。
この絵は、瀬戸内海に浮かぶ小豆島の勝景地、寒霞渓(かんかけい)を描く「寒霞渓図」と一双で対比をなす作品。東西の勝景を自身の胸に刻み込み、それを作品として昇華させた、鉄斎古稀(こき)の意欲作である。
INFORMATION
「没後100年 富岡鉄斎」展
<会期>11月24日(日)まで
<会場>碧南市藤井達吉現代美術館(碧南市音羽町1、0566・48・6602)
2024年10月18日 毎日新聞・地方版 掲載