
特別企画展「香りの装い~香水瓶をめぐる軌跡~」が開かれている。展示される主な作品を紹介する。
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19世紀になると香水の容器としてガラスが再び注目されるようになった。ガラス素材は機密性が高く香水の品質保持に優れ、色や形など多様な装飾が可能な上に、市場の需要に合わせた量産性にも適していた。
欧州各国で個性的なガラス製の香水瓶が作られるなか、ベネチアでは、ベネチアン・グラスやべネチアン・ビーズなど独自の技術を活かした香水瓶が制作された。3点のうち中央の作品は、鮮やかな多色のマーブル模様と金粉のように輝くアベンチュリン・グラスを散りばめた本体に、男性の肖像のモザイク・グラスが象嵌(ぞうがん)された独創的なデザインである。両端の作品は、黒地のガラスにビーズに用いられる勿忘草(わすれなぐさ)やバラの装飾を施し、純白レースの繊細な模様がそれぞれの美しさをより引き立てている。左の作品の裏側にVENEZIAという文字があることから、憧れの水の都をひと目見ようとベネチアを訪れる富裕層に向けて制作されたものと考えられる。限られた人しか国外旅行ができなかった時代、彼らは思い出とこうした異国の品々を携えて帰郷し大切な人との再会を喜んだことだろう。
INFORMATION
特別企画展「香りの装い~香水瓶をめぐる軌跡~」
<会 期>2025年1月13日(月・祝)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会 場>箱根ガラスの森美術館(箱根町仙石原 電話0460・86・3111 https://www.hakone-garasunomori.jp)
<入館料>一般1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主 催 箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後 援 箱根町
協 力 箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
特別協力 海の見える杜美術館、高砂香料工業
2024年10月8日 毎日新聞・地方版 掲載