石崎光瑤《筧》(右隻) 大正3(1914)年 南砺市立福光美術館蔵

【展覧会】
「生誕140年記念 石崎光瑤」 作品紹介/上
琳派の枠越え独自の世界

文:植田彩芳子(京都文化博物館主任学芸員)

日本美術

 京都文化博物館(京都市中京区)で開かれている回顧展「生誕140年記念 石崎光瑤(こうよう)」(毎日新聞社など主催)から、主な展示作品を3回に分けて紹介する。

 筧(かけい)とは、水を渡し引く掛け樋(とい)のこと。周囲には卯の花や百合が咲き誇り、樋にはつがいのツバメが羽を休めている。初夏の清々しい雰囲気を描き出した作品である。第8回文展で褒状を受けた出世作で、宮内省買上げともなった。展覧会場でこの作品を見た鏑木清方は、「静かな気持ちいい作品」と強く印象に残ったという。

 光瑤は初めに江戸琳派の絵師に学び、京都に出て竹内栖鳳(せいほう)に学ぶ。栖鳳は光瑤に、今まで学んできた琳派という特色を捨てるのではなく、それを活(い)かしつつ、さまざまな絵を学ぶよう指導した。この作品は、そんな指導を受けていた時期の作品で、写実と装飾を融合した魅力がある。やがて光瑤は琳派だけでなく、京狩野、伊藤若冲などの古画を研究し、自らの絵画世界を築きあげていった。

INFORMATION

生誕140年記念 石崎光瑤

<会期>11月10日(日)まで
<会場>京都文化博物館(京都市中京区三条高倉、075・222・0888)

2024年9月22日 毎日新聞・京都版 掲載

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