◇職人の気迫と誇り感じ
あめ細工のように溶けたガラスから生み出される装飾性豊かなガラス作品は、ベネチアン・グラスの大きな魅力の一つである。ベネチアの職人たちは、加熱すると水あめのような状態が長く保たれるソーダガラスの特性を活かし、ガラスでしか表現できない形を追求しながら造形技術を磨いてきた。
その優れた技術を大いに発揮したのが19世紀の作品である。16世紀頃よりガラス産業を牽引してきたべネチアは、18世紀にヨーロッパ各国のガラス産業の台頭によって苦難の時代を迎えた。周辺諸国で彫刻を施したガラスや鉛クリスタルガラスへの人気が高まるなか、ベネチアは他国の追随を許さない溶着装飾の技術で、脚部に花や鳥を造形装飾した繊細優美なガラス作品を生み出していく。
このゴブレットは、脚部に過剰とも言える繊細な花装飾が施されている。華やかさの奥に独自の技術を貫くガラス職人の気迫と誇りが感じられる逸品である。
INFORMATION
特別企画展「ヴェネチア、プラハ、パリ- 三都ガラス物語」
<会期>2024年1月8日(月)まで。午前10時~午後5時半(入館は同5時まで)。会期中無休
<会場>箱根ガラスの森美術館(神奈川県箱根町仙石原 電話0460・86・3111)
https://www.hakone-garasunomori.jp
<入館料>大人1800円、高校・大学生1300円、小・中学生600円
主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)、小田急グループ
2023年8月15日 毎日新聞・神奈川版 掲載