【美とあそぶ】 鈴木杏さん/2絵は自分だけの表現

文:葛西大博(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 2016年元日に絵を始めた時は28歳でした。当時は自分にはお芝居しかないと思い、集中し過ぎていて、どこか空回りする感じがあった。絵を描くようになってパワーが分散されたのか、良い意味で力が抜けて、柔軟にお芝居ができるようになりました。

 お芝居は通訳や翻訳に近い気がします。脚本家や戯曲家が社会の声なき声を拾って書いたものを、俳優は肉体や感情を使い演技しますが、自分の表現ではないと思っています。絵は完全に自分だけのもの。描くことでオンとオフが切り替えられるようになりました。

2018年の作品

 これは、18年出版のイラスト・エッセー集に掲載した作品です。基本的にタイトルは付けないので、何となく「木の絵」と呼んでいます。それまで白黒の線画ばかりでしたが、水彩画に取り組んだ最初の頃のもの。配色は全体のバランスを見ながら直感です。今見てもきれいだなと、お気に入りの一枚です。

PROFILE:

鈴木杏(すずき・あん)さん

1987年東京都生まれ。96年にデビュー。第28回読売演劇大賞で大賞・最優秀女優賞を受賞(「殺意 ストリップショウ」「真夏の夜の夢」の演技)。6月25日スタートのNHK土曜ドラマ「空白を満たしなさい」に出演予定。

2022年5月23日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

シェアする