「いよいよエベレストへ」

【美とあそぶ】
野口健さん/1
報道カメラマンに憧れ

文:岸達也(聞き手、毎日新聞記者)

インタビュー

 実は、中学、高校と写真部に所属していました。1980年から日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ「池中玄太80キロ」シリーズに小学生のころからはまって。西田敏行さん演じる主人公の報道カメラマンに憧れ、中学生くらいまで将来の夢は写真家でした。

 13歳の時、父にねだって初めて買ってもらったカメラがニコンのFM2。星を撮影したかったので、寒さに強いという売り文句にやられました。デジタルカメラ全盛の今ではすっかり絶滅危惧種ですが、マニュアルのフィルムカメラで写真のイロハを学びました。

 写真はエベレスト登山時に通過するベースキャンプ入り口の看板です。色を見てください。雲一つない深い青空に、エベレスト山頂部の白雪が実に映える。そして、毒々しいまでに存在感をアピールするポップな黄色い人工物。この看板を目にすると、いよいよ苦しい登山が始まると気を引き締めるんです。

野口健さん

PROFILE:

野口健(のぐち・けん)さん

1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。99年5月、25歳でエベレスト登頂に成功し、7大陸最高峰登頂の世界最年少記録(当時)を樹立。その後の活動は清掃登山や戦没者の遺骨収集など多岐にわたる。

2021年12月6日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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