「土田ヒロミ写真展」の展示風景=上村里花撮影

【ART】
虚実交え写す群衆
大阪で土田ヒロミ展

文:上村里花(毎日新聞記者)

写真

 戦後の日本と日本人の変容する姿を多角的な側面から撮り続けている写真家、土田ヒロミさん(86)の写真展が、大阪市中央区のラッズギャラリーで開かれている。2005年に発表した「新・砂を数える」シリーズから新たにプリントした約20点を展示。「写真=事実」の関係性を問う作品は、人工知能(AI)技術の発達により虚実の境が曖昧になる現代にあって、より切実に響く。

 土田さんは福井県出身で、1970年代にカメラマンとして独立し活動。半世紀近く広島に通い、「ヒロシマ3部作」などを手がけるほか、11年以降は東京電力福島第1原発事故で被災した福島にも足を運び、撮影を続けている。

 「砂を数える」の題材は、都市の中の「群衆」だ。75~90年に撮影した「砂を数える」と、バブル崩壊を挟んで改めてカメラを向けた96~02年の「新・砂を数える」の2シリーズがあり、今展覧会では後者の新しいプリントを、デジタル技術で加工した。写るのは、鳥取砂丘などの観光地、海水浴場、スキー場、ビル街の中の広場などに集う人々。前シリーズで群衆は同じベクトルを向く集団だったが、新シリーズでは<互いに距離を取って群れる>存在となっている。個々につながりはなく、多数の中に無数の「個」が見える。

「横浜」(1996年、「新・砂を数える」シリーズより)=上村里花撮影

 新シリーズのもう一つの特徴は本来写り込むはずのない写真家本人の姿が、合成により群衆の中に紛れ込んでいることだ。写真表現は事実を写し取ることとイコールではない。撮影時、デジタルカメラの登場によって「写真=事実」の関係が「ますます脆弱(ぜいじゃく)性を増している」という写真家の認識を反映している。

 さらに、本展用に新しくプリントした展示作品には、ギャラリーのスタッフたちの姿も紛れ込んでいる。思わず、くすっとする遊び心だが、土田さんは「現在はさらに現実とフェイクの境が曖昧になり、私たちはその間を漂って生きている。その中で、何が事実なのかをつかみ取る判断力を持つ必要がある」と語る。

 「土田ヒロミ写真展 新・砂を数える」は30日まで。

2026年8月17日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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