「semi-sequence#1」(2026年)=上村里花撮影

【ART】
世界の反転かたどる立体
大西伸明さん新作展 大阪

文:上村里花(毎日新聞記者)

現代美術

 「作品が作家の一歩先をいくようなものを創りたかった」。大阪市城東区のギャラリーノマルで開かれている個展「大西伸明:透明へほどける」について、大西伸明さんはそう語る。約20点の展示作品全てが新作だ。

 大西さんは1972年、岡山県生まれ。京都市立芸術大大学院で版画を専攻するが、その後はオブジェを中心に制作。日用品や自然物を精緻に型取りして着彩し、その表層をトレースした立体作品で知られる。本展は「透明って何?」との問いから始まった。見えないもの(透明)を型取りの過程で見せようという試みだ。

 最初の作品が「semi—sequence #1」(2026年)。蛍光イエローの半透明な角形オブジェと、それを包んだ箱の型の裏表を入れ替えた。オブジェの形のくぼみが存在感を放つ。

 大西さんは展示案内でこう記す。<箱を裏返すことは世界そのものを反転させることに等しい。内と外が入れ替わり、世界すべてが宝物へと変わる>。そして、さらに全体をひっくり返すことで<境界は消え、そこにはただ、透明な関係だけが残る>。

 本展の底流にあるのが、ピート・モンドリアンの油彩「ブロードウェイ・ブギウギ」(42~43年)だ。黄色や赤、青が効果的に使われた抽象画で、大西さんは「僕にとっては光の象徴の作品」とする。「semi~」の蛍光イエローも、ここから着想している。

 電球をかたどったオブジェ「Light bulb—BB」(26年)。「ブロードウェイ~」の赤や青、黄色を積み木のように組み合わせ、それを丸く刷って電球型の中に封じ込めた。二次元がオブジェに取り込まれて三次元となり、さらに電球の下に置いた鏡に映ることで再び二次元として出現する。二つの位相の中にモンドリアンの光が浮かび上がる。

「Light bulb-BB」(2026年)=上村里花撮影

 壁には鏡をかたどった灰色の「semi—sequence—Mirror #1」(26年)。鏡面上に「目玉」のように丸い突起とくぼみがある。ネガとポジのように反転する構造が一つのオブジェの中に共存する作品だ。大西さんは「鏡側からと(私たちの)世界側から押し合う中間領域にこのオブジェがある」と説明する。

 展示作はいずれも、二重三重に反転していく。その過程に私たちは何を見るのか。8月22日まで。

2026年7月27日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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