ガタロさん「人間ハ丸太カ」(右)や亀井文夫と吉見泰(いずれも故人)が監督・編集し、連合国軍総司令部(GHQ)により上映禁止処分となった映像作品「日本の悲劇」(左、1946年)=上村里花撮影

 現代社会にも通底する「植民地主義」の精神構造を考えるグループ展「月を射る」が岡山県倉敷市のギャラリー「KAG」で開かれている。

 タイトルは、第二次世界大戦末期に留学先の日本で獄中死した朝鮮半島出身の詩人、尹東柱(ユンドンジュ)の散文詩「月を射る」から取っている。企画した川上幸之介・倉敷芸術科学大学准教授は、詩人が射ぬこうとし「砕いてもなお元の形に戻る月」に、「個人の力では変えがたい支配の構造や歴史の重力」を見る。排外主義が強まり、極右的な思想が一定数の支持を集める「日本の現状への危機感から企画した」と言う。戦前・戦中の映像から現在の作家の作品まで計11件を展示している。

 米サンフランシスコを拠点に活動するアーティスト、T・T・タケモトさん(1967年生まれ)の「ジローを探して」(2011年)は、第二次世界大戦中の米国の日系人収容所の記録映像と、タケモトさんが実在のゲイ男性、日系人ジローを演じるパフォーマンス映像が組み合わされた作品。歴史の語りから抜け落ちてきたクイアの姿を可視化し、<想像や推測を通じて再構築する歴史記述の実践>(菅野優香・同志社大大学院教授)だ。

 アーカイブ資料やワークショップなどを用い、歴史を独自に再考するインスタレーションなどで国内外で高い評価を受ける藤井光さん(76年生まれ)の「帝国の教育制度」(16年)は、戦時中のアメリカ陸軍が製作した日本の教育についての資料映像と、作家が現在の韓国で実施したワークショップの記録映像が交差しながら進行する。ワークショップの最後では、参加した韓国人学生たちが作家の指示を超えて、自ら動き出す。全体主義と教育、ナショナリズムと抵抗などへの思索を促す。

 広島市の基町地区で長年、清掃員として働きながら、労働の現場を描き続けているガタロさん(49年生まれ)が、731部隊を描いた異色作「人間ハ丸太カ」(83年)も並ぶ。

 いずれも歴史を扱ったものだが、単なる「過去」ではなく、現在、そして未来の姿をも映し出しているようだ。

 8月16日まで。

2026年6月8日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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