「三味線を弾く洋装の骸骨と踊る妖怪」 1871~79年 写真協力:立命館大学アート・リサーチセンター=イスラエル・ゴールドマン・コレクション

 幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(きょうさい)。ユーモアに富んだ作品からは、社会の変化や矛盾へのまなざしを感じる。半数を超える国内初出品作を含め、世界屈指の暁斎コレクターであるイスラエル・ゴールドマン氏の所蔵品から厳選された作品を展示する「ゴールドマンコレクション 河鍋暁斎の世界」が、東京・六本木のサントリー美術館で開かれている。

 暁斎は7歳の頃から歌川国芳に手ほどきを受け、10歳からは武家の御用絵師だった駿河台狩野派の前村洞和、狩野洞白陳信の下で修業を積んだ。その後、さまざまな流派の画風を学び、独自のスタイルを確立する。今回は暁斎の世界を形作る四つの題材、けもの▽ひと▽おに▽かみ・ほとけ--を中心に、幅広い作風を堪能できる。

 暁斎は当時の人々の姿や社会を熱心に描いてきた。「三味線を弾く洋装の骸骨と踊る妖怪」(1871~79年)では、洋装の骸骨の背後から日本刀がのぞき見える。明治政府の施策で表面的に西洋化が進む中、中身は旧態依然とした人々をやゆしたものだ。

 当時の絵画は一般的に、歴史や仏画など古典的な画題を丹念に描いた「本画」、軽快なタッチでこっけいさや風刺を利かせた「狂画」に分類された。そんな中、暁斎は狩野派で学んだ本画に、狂画らしいこっけいさや動きある描写などを持ち込んだ。その画風が端的に表れているのが「地獄太夫と一休」(71~89年)。西洋解剖図に基づいた骸骨や遊女の打ち掛けが精緻に描かれ、骨だけの三味線や扇といった遊び心も感じられる。

「地獄太夫と一休」71~89年 Photo:Ken Adlard=イスラエル・ゴールドマン・コレクション

 動物を取り上げた作品にも、伝統的な画題で当時の風俗を切り取る暁斎の画風が表れている。特に好んで描いたのがカエルや猫。カエルは京都・高山寺にある「鳥獣人物戯画」とのつながりを感じさせる重要なテーマで、「蛙(かえる)の射的場」(71~76年)では、明治初期に開かれた民間の射的場の様子を描いている。「猫又図」(71~89年)は、しっぽが二つに分かれた猫の妖怪「猫又」が手拭いを頭にかけ、石灯籠(どうろう)の上で踊っており、見ているだけで楽しくなる。

 21日まで。7月11日~9月23日に神戸市立博物館、10月10日~12月6日に静岡県立美術館へ巡回。

2026年6月1日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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