
写真を通して「世界」を見つめる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が京都市内で開かれている。13回目の今年は「HUMANITY(人間性)」がテーマ。町家や寺社、ギャラリー、商店街など14カ所を舞台に国内外の14組の作品が並ぶ。写真とは「見えないもの」を写し出すメディアだと再認識させる作品群だ。5月11日まで。
ギャラリー「ASPHODEL」と出町桝形商店街会場では、コートジボワール出身で、黒人特有の自身の髪を素材に造形するレティシア・キイが、女性に対する暴力や男女平等、日本文化などをテーマに展示している。レティシア自身、自らの容姿を愛せず、苦しんだ過去がある。髪はまっすぐで、肌は明るい方がいい--仏の植民地時代以降、この地に植え付けられてきた「文化」の呪縛だった。それ以前のアフリカの女性たちの美しく、独創的な髪形の存在を知ったことを機に自身の髪を使った創作を始め、自らを愛する力を得た。
「Self Love」と題した一連の作品では、さまざまな形の乳房が並ぶ。垂れ下がったり、大きかったり、片方だけだったり。女性にとって身近であり、コンプレックスの元にもなる乳房。自分の体を受け入れ、愛することは、自身を愛することにつながるとのメッセージが込められる。
JR京都駅ビル北側通路に登場した仏出身のアーティスト、JRの写真壁画(縦5㍍、横22・55㍍)は今年の目玉の一つ。JRは市内8カ所に移動式スタジオを構え、住民500人以上を撮影し、京都の風景写真の中に組み合わせた。参加した約500人全員の人生の「物語」をウェブ上で聞くこともできる。名も無き人々の物語が一つの作品を生み出す。

嶋臺 ギャラリー東館会場のリー・シュルマン&オマー・ヴィクター・ディオプは、白人ばかりのスナップ写真の中に、本来、写っていない黒人であるディオプの画像を合成。「見えないもの」を問う。「八竹庵」会場のパレスチナ系米国人のアダム・ルハナは、パレスチナの日常、自然を写す。会場には写真と共に、子供たちの声や食器の音など生活音が流れ、その合間に爆撃音が響く。見えないパレスチナの「今」を思う。
2025年4月28日 毎日新聞・東京夕刊 掲載