昨年の「ここのがっこう」修了展で展示された作品=山梨県富士吉田市で2024年4月13日

 ファッション表現を学ぶ私塾「ここのがっこう」(東京都中央区)が12~14日、山梨県富士吉田市内で修了展を行う。なぜ東京の私塾が、富士吉田市で修了展を開催するのか。「ここのがっこう」を主宰するデザイナーの山縣(やまがた)良和さん(45)に話を聞いた。

山縣良和さん

 「ここのがっこう」は、2008年に設立されたファッション表現を学ぶ場で、自身のルーツを探ることに重点を置いているのが特徴だ。世界的なファッションコンテストの受賞者を輩出するなど、修了生の活躍が目覚ましい。これまでの実績が評価され、21年には長らく業界に貢献した人や団体に贈られる毎日ファッション大賞・鯨岡阿美子賞を受賞した。

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 富士山の山麓(さんろく)に位置する富士吉田市は織物の名産地として発展してきた。山縣さんは富士吉田市を訪れた際、繊維産業によって作られてきた街の空気感に魅了された。「ここで学生と富士吉田市のつながりができる種まきをしたい」。21年に富士吉田市での修了展を始めた。

 英国のセントラル・セント・マーチンズ美術大で学び、海外のファッションを見てきた山縣さんは「日本のように、これだけ多彩な産地がある国というのはなかなかない」と話す。「日本でファッションを学ぶ上では、日本の産地を知ることが大切。(富士吉田市とのつながりが)そのきっかけになってほしいと思っています」

 新型コロナウイルス感染拡大下だったため、1回目の修了展は市内の複合施設「FUJIHIMURO」のみでの開催だった。だが、2回目以降は「街を練り歩く修了展にしたい」と、市内の複数箇所で展開している。「クリエーションと場の共鳴を見てほしい」という思いがあるからだ。

 4回目となった昨年は、受講生約70人(うち、インスタレーション形式は約40人)が作品を発表した。喫茶店の跡地や工場跡地を利用し、受講生は思い思いの作品を発表した。服だけではなく、絵や立体作品など、既存の「ファッション」のイメージの枠を越えた作品も展示された。

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 作品だけでなく、受講生のバックグラウンドもさまざまだ。サラリーマンや高校生、看護師など、これまでファッションを学んでこなかった人も多い。「(修了生の中には)世界的なコンペティションに出る人もいるかもしれないし、『ここのがっこう』で学んだことを自分の仕事で生かす人もいるかもしれない。自分自身の存在を受け入れた上で生まれる物作りが大事なんです」

 今年も、受講生それぞれが自身と向き合う中で生まれた作品が富士吉田市を彩る予定だ。山縣さんは「ファッションって楽しいな、ファッションって何だろう?と感じてもらえるような修了展になってほしい」と話している。

 修了展は12~14日、午前11時~午後5時(最終日は同4時まで)。入場無料。FUJIHIMUROで展示会場の地図をもらえる。問い合わせはここのがっこう(。)

2025年4月7日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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