BankART Stationで開かれた最後の展覧会「アライブ!展」の様子=小松やしほ撮影
「BankART 1929」代表の細淵太麻紀さん=小松やしほ撮影

 横浜を拠点に現代アートを通して街と人とを結びつけてきたNPO法人「BankART(バンカート)1929」(代表・細淵太麻紀さん=写真)が、みなとみらい線新高島駅構内の「BankART Station」、同馬車道駅近くの「BankART KAIKO」での活動を今年度末で終了する。横浜市が昨年11月末に行った来年度から30年度までの運営者公募で選定されなかったためで、来年度以降の活動については模索中という。

 バンカートは2004年、歴史的建造物や港湾施設等を文化芸術に活用しながら、都市再生の起点にしていこうという同市の「創造都市構想」プログラムとしてスタートした。最初の拠点となったのが元銀行だった建物だったことから「Bank」と「ART」でバンカートと命名。作家の個展を開くのはもちろん、若いクリエーターの支援や芸術関連書籍の発行・販売、カフェ運営などを通して「アートの街・横浜」の礎を築いてきた。

 活動終了を惜しんで22、23日には、BankART Stationで最後の展覧会となる「アライブ!展」が開催された。アーティスト有志が実行委員会を結成し、川俣正さん、岡崎乾二郎さんらゆかりのある作家や、いつかバンカートで展示をしてみたいと思っていた若手ら520人超が出展した。展示作品はすべて購入可能で、売り上げの50%以上はバンカートへ寄付されるという。

 出展した美術家の開発好明さんは「海外から帰国したばかりでアートでは食べられないころから、定期的に展覧会などに誘っていただいた。バンカートがなかったら大変でしたよ。そういう作家は多いんじゃないかな」と話した。

 バンカートでは撤去費用の不足分を補うためクラウドファンディング(CF)を行い、目標の1000万円に到達。来年度以降の活動資金等の確保のため、31日まで継続している。資金以外でも、移転場所候補などの情報も引き続き募集している。代表の細淵さんは「バンカートは組織というより、関わってくれる人の力で動いている運動体みたいなもの。止めるわけにはいかない」と活動継続への思いを語った。

2025年3月31日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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