建築倉庫の新設エリア。手前は「多面体と構造」で制作できる多面体の実物=いずれも東京都品川区の建築倉庫で7日=小松やしほ撮影

見て触れて学んで楽しむ
東京・建築倉庫がリニューアル

文:小松やしほ(毎日新聞記者)

建築

 東京・天王洲のWHAT MUSEUM(ワット・ミュージアム)内にある建築倉庫が8日、リニューアルオープンした。建築倉庫は2016年、建築倉庫ミュージアムとして開館(23年に名称変更)。建築家や設計事務所から預かった800点以上の建築模型を保管・管理しながら、その一部を展示してきた。リニューアルにあたり、従来の模型展示室に加え、建築模型の基本を学べる、体験型のスペースを新たに設けた。ワークショップや体験講座、専門家のトークイベントなどを定期的に開催し、建築模型を通じて子どもから大人まで幅広い層が楽しめる場所を目指す。

 エントランスを兼ねたエレベーターホールには、竹の素材を生かした構造でつくられた作品「三灯小径」が展示されている。23年に開催された企画展「感覚する構造-力の流れをデザインする建築構造の世界-」の出展作品で、滋賀県立大の陶器浩一研究室が設計したもの。一般参加者も含むワークショップで組み上げたという。その時の映像をベンチに座りながら、鑑賞することもできる。

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 新設された体験スペースは大きく三つのエリアに分かれている。入り口近くのテーブルが、実際に模型を触れるエリアだ。「起こし絵図を組み立てよう」では、台紙に描いた平面図の上に窓や戸など内外を描いた展開図を貼り合わせた紙の建築模型「起こし絵図」で、茶室の模型が制作できる。隣には、建築家の相田武文さんが考案したという「相田ブロック」。100分の1スケールで建築が作れる積み木だ。小さな子どもでも、楽しみながら建築に触れられる。さらに隣の「多面体と構造」ではVR(仮想現実)も駆使し、小さなものから最後には等身大の多面体を組み上げる体験ができる。

 中央のエリアは、建築倉庫で預かっている模型と、それを制作した建築家たちのインタビュー映像を鑑賞できる。最奥が、家づくりを考える人を対象にした体験講座を開くエリアだ。独自に開発した「模型で考える 土地から間取りまで」と題したプログラムで、全4回(次回は5、6月)。土地に見立てた紙の上に、間取りや家具のレイアウト、周囲の環境などを考慮しながら、立体的に家の模型を置いていく。講師は建築家の田中正洋さんと建築倉庫ディレクターの近藤以久恵さん。立地を生かした家の建て方から開口部の取り方、土地の制約条件や建築基準法などの専門知識まで実践的に学べる。

模型を組み立てながら、家づくりに必要な知識を学べるスペース=小松やしほ撮影

 近藤さんは「実際に触っていただくことで、我々が隣のスペースで建築模型をなぜ保管するのか、その意味と価値を感じていただけたら」と話している。

2025年3月24日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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