◇個性をひらく 魅力をひらく
大阪市立美術館コレクションの各分野の特徴を、本展出品作品とともに、同館・八田真理子学芸員に紹介してもらった。
◆日本の絵画
◇中近世 商都の繁栄の実り
ハイライトは当世の風俗を描いた華やかな屛風(びょうぶ)絵や、日本美術の巨匠・尾形光琳の生涯と芸術を知る上で不可欠の資料である重要文化財「小西家伝来 尾形光琳関係資料」。また、江戸時代の大坂画壇で活躍し森派の祖となった森狙仙(そせん)の作品など、活気あふれる都市文化のもとに生み出された魅力あふれる所蔵品がある。

◇近代 薫る「大大阪」文化
戦前に開館した当館は、関西の画家たちが活動する舞台ともなった。戦時下の1943年には「関西邦画展覧会」を開催。上村松園ら日本画の巨匠たちによる出品作は住友家から寄贈され住友コレクションとして今に伝わる。また主要な美術団体展の会場ともなり、「大大阪」を活写した関西洋画壇の作品も数多く所蔵する。

◆仏教絵画・経典
◇妖しげ曼荼羅など
大阪で市会議員・衆議院議員を歴任し、弁護士でもあった田万清臣氏とその妻・明子氏による田万コレクション。複合的な信仰の要素が描き込まれ妖しげな魅力を放つ「荼吉尼天曼荼羅図(だきにてんまんだらず)」や、薬師寺に伝来した奈良時代後期を代表する経典の遺品である「大般若経」の残巻(重要美術品)など、希少な優品がそろう。

◆漆工
◇今も刺激的な感性
ドイツ系スイス人の実業家U・A・カザール氏が収集した約4000件からなるカザールコレクションは、当館の所蔵品の中核をなす。江戸後期から明治にかけての漆工品は多くが海外に流出してしまったため、現代では非常に貴重である。本展に取り上げる酒器にもあらわれた当時の技術と感性は、今なお私たちの目に新鮮に映る。

◆陶磁
◇将軍への献上品も
当館所蔵の陶磁器には、中国や日本を中心に、朝鮮半島、東南アジアからヨーロッパまで古今東西の作品がある。その中でもまとまったコレクションとして、将軍家への献上品として作られた鍋島焼118件からなる田原コレクションや、いわゆる人間国宝の富本憲吉が日常の器として作った作品等100件からなる辻本コレクションなどがある。

◆中国書画・書蹟(拓本)
◇海外も注目の品々
東洋紡績社長を務めた阿部房次郎氏が集めた中国書画160件からなる阿部コレクションは、宋元時代の名品を含み、世界的にも著名で海外からの貸し出し依頼も多くある。一方、銀行マンであった岡村蓉二郎氏による師古斎(しこさい)コレクションは450件にのぼる拓本からなり、書道史にきらめく名品を見ることができる。

◆彫刻
◇中国の優品豊富に
当館は公立館として珍しく中国美術を数多く所蔵する。とくに中国の石造彫刻コレクションは質量ともに世界でも指折りのもの。中国の仏像史上、最もすぐれた彫刻を生み出した北魏の作例も豊富である。雲岡(うんこう)、龍門など著名な石窟からもたらされたものもあり、向き合えば悠久の歴史に思いをはせることができる。

◆金工
◇圧巻の技法と意匠
中国の青銅器や帯鉤(たいこう)、日本の仏具や装身具、刀の鍔(つば)など、宗教儀礼に用いられた工芸品から日常の実用品までバリエーション豊かなコレクション。鏡などに日中の様式の違いを比べる楽しみもある。金工のハイレベルな技法と洗練されたデザインは現代の私たちをも魅了する。世界に3件しかない羽人(うじん)像は必見。

*紹介した作品はいずれも大阪市立美術館所蔵
◆展覧会ガイド
◇会期
3月1日(土)~30日(日)。月曜休館。9時半~17時(入場は16時半まで。1日は10時開館)
◇会場
大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町、電話・大阪市総合コールセンター06・4301・7285)
◇入場料
一般1800(1600)円▽高大生1200(1000)円▽中学生以下無料 ※カッコ内は前売り(2月28日まで販売)、20人以上の団体料金。詳細は展覧会公式ホームページ=https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/whats_new=をご確認ください。
主催 大阪市立美術館、毎日新聞社
後援 公益財団法人大阪観光局
協賛 株式会社天理時報社
2025年2月27日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載