安藤忠雄さん設計の「ICHION CONTEMPORARY」外観=山田夢留撮影

 大阪・梅田の繁華街からほど近い場所に、今月、現代美術を扱うギャラリーがオープンした。ビルとビルのはざま、間口4㍍の土地に建つのは、安藤忠雄さん設計の極細ビル。「不可能を可能にした」と安藤さんが話す幅約3㍍、奥行き約15㍍、高さ約27㍍の建築を拠点に、新たなアートの発信を目指すという。

 開廊したのは「ICHION CONTEMPORARY」。代表の上一音(じょういちおん)さんの名にちなむと同時に、「作品が奏でる音が人々の心に響き、その響きが共鳴しあって新たな文化の波を作っていく」(上さん)との意味を込めたという。開廊記念展では「GUTAIは生きていた」と題し、戦後の前衛芸術家集団「具体美術協会」に焦点をあてた(3月29日まで)。

 ギャラリーはコンクリート打ちっぱなしで地上5階、地下1階建て。エントランスの吹き抜けには、元具体会員の向井修二さんが本展のために手がけた新作を展示する。向井さんの代名詞、記号をびっしりと描きこんだバイオリン20丁が浮かぶインスタレーション。各階には吉原治良(じろう)や白髪一雄らの作品が並ぶ。

向井修二さん(右から2人目)が手がけたインスタレーション=大阪市北区で=山田夢留撮影

 「敷地を見た時はこんなところでギャラリーができるのかと思った」と安藤さん。施工を担ったのは狭小住宅「住吉の長屋」以来、信頼を置く建設会社で、最上階には斜めにせり上がる特殊な大窓も設置した。ギャラリーでは今後、若手作家の展覧会も開催予定。安藤さんは「可能性のないところに可能性を作るのが我々の仕事。ぜひここから日本だけでなく、アジア、世界へと羽ばたいてほしい」と話す。

2025年1月29日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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